蓋付本棚

本棚を眺めていると尽きない

『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』城戸久枝

f:id:futahon:20210910095839j:plainNHKドラマ「大地の子」が再放送されて話題になっていた。何度見ても心を打たれる。それでこの本も思い出した。

残留孤児の物語は多くあるが、この本は大人になって帰国した元残留孤児の、その娘の物語。娘は普通に日本人として育ち、父親の来歴を知り、興味を持って旧満州の牡丹江に留学する。現代中国での学生生活、人間関係とか学生の日本観とか、父親の「元身内」との絆とか。

うちの父も旧満州で生まれ、母親と弟妹と引き揚げてきた。子供時代の話、引き揚げの話、自分たちも残留孤児になったかもしれないと折にふれ話していたし、私はそれで旧満州の土地に親しみを覚えていた。だからなおさら他人事でなく共感して読み応えがある。

大地の子」に感動する人にこの本も知ってほしい。これもドラマ化されていたはず。主演の鈴木杏にはこの時から注目している。


『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子

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新潮文庫版を読んだ。著者のことは知らなかったが本屋でタイトルに惹かれて。学術会議で菅首相から任命拒否されたのはそのあとの事。その後の発言なども見て骨のあるかただなと思う。

日本人は戦争を選んだと言われて、そんなことないと言いたいけどわからない。当時の空気や時代の流れが掴めるかもしれないと期待して読んだのだった。


肝心の本書の中身は高校生との対話で丁寧に話されているのだけど、あまり頭に残らなかった。近代史の素養に乏しい自分の問題が大きいが、国の軍事・経済戦略などにどうしても興味が持てず頭に入らないというのもある。

いくつか、中で紹介されている本が気になった。

『けものたちは故郷をめざす』安部公房

『飢死した英霊たち』藤原彰←ぜひ読んで、だそう。

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『接着とはどういうことか』井本稔、黄慶雲

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神田の古本屋でふと買った。

指を水で濡らすと小さな粒をひっつけて集めることができる。子どもの頃にふとそれが不思議になった。今なら表面張力、水素結合かなと思うけど確かな原理は知らない。漠然と抱えつづけている疑問にばっちりの題名だった。

接着を語るのに濡れやすさの話から始まるとは思わなんだ。原理から始まって接着剤へ。

1980年の本なので今の接着剤事情はまた違っているかもしれない。続くものはあるだろうか。

🔍「接着、本」

…あったけど在庫はなさそう。2012年刊。目次が魅力的。またいつか古本屋で。

『図解でなっとく!接着の基礎と理論』三刀基郷 https://pub.nikkan.co.jp/books/detail/00002341


『道標』宮本百合子


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写真は母の蔵書にあったもので昭和42年の新潮文庫。旧仮名。今は青空文庫で読める。

革命後間もないソビエト連邦、モスクワの印象が詰まった小説。百合子本人である主人公は新しい社会主義の国を体験する。ずいぶん感覚的でフワフワしているが、人の様子や街の景色、雰囲気が生き生きと伝わってくる。

モスクワのアストージェンカ1番地は主人公たちが部屋を借りる場所で、現代の地図で探してみた。金色の丸屋根のキリスト教会のそば、並木道の起点、モスクワ川から程近くと説明されているのが目印になる。確かにあった、Ulitsa Ostozhenkaの角地。

アストージェンカ1番地で机に向かう主人公を見ていると、不思議と自分も勉強しようという意欲が起こる。

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